北口雅章法律事務所

弁護士のブログBlog

「誰が」4200万円を負担するのか?

第二東京弁護士会から,「業務停止1か月」の懲戒処分を受けた弁護士が,
当該懲戒処分の違法を理由として,当該弁護士会を被告として損害賠償請求訴訟を起こしたところ,勝訴し,約4200万円の損害賠償を認容する旨の判決を受けた,という。このまま確定するとは思えないが,しも確定したら,その4200万円は誰が負担することになるのか?

 

敗訴した第二東京弁護士会が4200万円の賠償義務を負うことは当然として,
問題は,「注意を怠り」違法な懲戒処分を行ったのは,弁護士会の懲戒委員会であることを重くみると,弁護士会は,懲戒委員会の構成メンバーである各懲戒委員に共同不法行為責任が成立するとみて,各懲戒委員に対し,求償権を行使することができるか?
もっとも,懲戒委員会は,愛知県弁護士会の場合,15名の懲戒委員で構成されており,その約半数は,弁護士以外の委員(裁判官,検察官,大学教授)で構成されており,もとより無償行為(ボランティア)である。したがって,15名で割っても,一人当たり約280万円もの賠償責任を負うことになっては,いかにも過酷であり,懲戒委員の引き受け手など誰もいなくなるであろう。

[追記(令和3年3月18日)]某市の行政不服審査会の後,行政法学者のK先生からご指摘を受けたことですが,懲戒処分をした弁護士会が,裁判で負けても,国家賠償責任を負った国・公共団体が,公務員の個人責任を追及できないのと同様,懲戒委員会の各委員の個人責任は発生しないそうです。ブログに間違いがあったことを訂正の上,お詫びします。

フツーに考えると,もしも東京地裁判決が認定した理由どおりの違法があれば,懲戒処分の対象者となった弁護士においては,懲戒処分決定を受けた直後に,日弁連の懲戒委員会に対し審査請求するはずであるから,その審査請求の段階で違法処分が是正されるはずではないか。もし対象弁護士がそのような審査請求をしなかったとすれば,当該対象弁護士にも重大な落ち度があり,大幅な過失相殺は免れないだろう。それでも,今時,「1カ月約4200万円也!」なのか???

 なんだかよく分からない報道だが,事件の帰趨(「始末記」)は,賠償義務の帰属も含めて業界誌(近頃めっきり中身もページ数も薄くなった『自由と正義』)で,報道してもらいたいものだ。東京地裁判決は,判例時報にも載るのかもしれないが・・・。